岡本太郎×New Era® / Talk Show


今年の春夏シーズンを代表するプレミアムモデルとして、現在巷を騒がせている岡本太郎 × New Era®の歴史的なコラボレーション。そのリリースを祝して、シリーズ第一弾の発売日に、岡本太郎記念館・館長の平野暁臣氏、レゲエサウンドRED SPIDERのJUNIOR氏、『The New Era® Book』編集長・上木基嘉氏を交えたトークショーが開催された。同プロダクトの魅力はもちろん、鬼才・岡本太郎のエピソードやレゲエ・ミュージックとの共通点など、さまざまなクロストークが飛び出した当日の模様をここにリポート!




渡辺志保(以下●)まずは平野さんに伺いますが、New Era®というブランドはご存知でしたか?

平野暁臣(以下H)「いえ。僕、帽子に全く興味がないんですよ」

会場&出演者:笑

H「ただ、今回のお話をもらって直感的に面白いことになりそうだなっていう勘は働いたんです。それでいろいろ資料を拝見して、伝統のあるブランドだし、今までもいろんな面白いことをやっこれられたというのを知って、ニューエラとだったら面白いモノが作れるかもしれないと思ったんですね」

● 実際にさまざまな企業が岡本太郎とのコラボレーションを希望されているそうですね?

H「いろんな話を頂きますね。いろんな業界からコラボレーションをしたいっていう話を頂くけど、まあ打率で言うとそんなに高くないんですよね」



● それはなぜですか?

H「なぜ岡本太郎なのか? ということを考えていないケースが多いからです。太郎のどこに惚れたとか、太郎の何を伝えたいとか、そういう熱い思いが伝わってこないところとは、やらないようにしています。ニューエラの方が打ち合わせに来られた時は、太郎のことが大好きで、凄く愛情を持ってくれているのがよく分かりました。だから、こういう人たちとなら、もっと前に進めるかもしれないと思ってこのお話を受けたんです」

● 長年、New Era®に携わられている上木さんは、いまのお話を聞いてどう思われました?

上木基嘉(以下U)「確かに凄く伝統のあるブランドで、製品のクオリティについても厳格なんですが、もう一方で常に新しいことに挑戦していくという気概もあって、それが若い人たちに支持されている要因でもあるので、今のお話を聞いてなるほどなと思いました」

● JUNIORさんはこれまで何度もNew Era®とコラボレーションをされていますが、ご自身から見たNew Era®のイメージは?

JUNIOR(以下J)「僕も同じで、やっぱり作りが良くて、どのアイテムも被りやすいというのはありますね。個人的にも普段から被ってますし」

● 今回発売されるシリーズをこちらにご用意しましたが、仕上がりをご覧になった感想は?

H「良いと思いますね。デザインのクオリティも加工技術も高いブランドなので、良いものができるとは思っていましたが、一番良いのは遠慮をしてないところです。大抵こういう時って、みなさん最初は遠慮されるんですよ。例えば、ノートリミングで絵が印刷されているようなものが上がってきたりとかね。いやいや、太郎は神棚に奉るようなものじゃないから、もっと遊んでいいんだよ、って言うんですが、みなさんその呪縛から逃れられないんですよ。でもニューエラの人たちはそこを自由にやってくれた。だから、こういう優れたクオリティになったんだと思います」



● 確かに第一弾である、太陽の塔をモチーフにしたこの[59FIFTY®]もかなり斬新なデザインでインパクトがありますよね。

H「やっぱり新しい時代を作っていく若いヤツらを触発したいし、岡本太郎の芸術観とか美意識とか、そういうモノを次の時代に伝えるために僕らは活動しているワケですからね。ガラスのケースに入れて寄るな触るなってやってたら郷土資料館の矢じりみたいなモノになっちゃうわけですよ(笑)。つまり死んじゃうわけです」

● ただ、岡本太郎と言われると、メディアなどで見ていたイメージも含めて、恐れ多いと萎縮してしまう気持ちも分かります。

J「確かにちょっと怖いイメージはありますね。怒られんちゃうかな、みたいな。なんやったら 今日も怒られんちゃうかなって...(笑)」



● (笑)。JUNIORさんは今回のコラボレーションをご覧になってどう思われましたか?

J「近鉄バファローズのモデルがたまらなく欲しいですね。帰りにこっそり持って帰ろうかなって思ってます」 会場&出演者:笑

● 近鉄バファローズのロゴも岡本太郎の作品ですが、大阪万博の太陽の塔しかり、大阪との関わりが密接な印象がありますね。

J「自分は大阪で生まれ育ったんですけど、太陽の塔もあるから、岡本太郎は大阪の人やっていう感覚で、勝手に馴染んでましたね」



● 上木さんは実際に太陽の塔をご覧になったことはありますか?

U「僕は小学1年生の時に大阪万博へ行って、凄いなって思った記憶がありますね。平野さんは6年生だったんですよね?」

H「そうですね。さっきも楽屋でちょっと話していたんですけど、今日お越しのみなさんって若い世代の人ばかりだから、たぶん大阪万博を見た人はほとんどいないと思うんです。想像がつかないかもしれないけど、凄かったんですよ。1970年の開催ですからね、戦争が終わってまだ25年しか経ってないんです。そういう時代にね、ロボットやロケットやコンピューターに月の石、動く歩道とかね、つまり日常とは関係のないSFの世界がいきなり目の前に現れたんですよ。この驚きと衝撃は僕の人生の中でも最大で最高の事件でしたね」

U「周囲の浮かれ具合が凄かったなっていう記憶が鮮明にあります。例えるなら、ワールドカップの決勝トーナメントみたいな高揚感が半年も続いているような(笑)。そのシンボルが太陽の塔だったので、やっぱり凄いなっていうイメージしかないですね」

H「世の中の万博ファンっていう人は、だいたい僕らの世代の前後10歳くらいに集まってるんですよ。漫画家の浦沢(直樹)さんもそうですよね。彼は僕のひとつ下で、小学校5年の時に万博に行けなかったんです。行けなかったから、あの『20世紀少年』を書けたわけですよ。あの物語自体、「万博に行った!」ってウソをつくところから始まるでしょ?」



● 実際に当時の日本の人口の約半数近くが来場したというデータもあるそうですね。その熱気を象徴するモニュメントが太陽の塔だったわけですが、今も変わらず大阪の人たちに愛されているんですよね?

J「完全に馴染んでいると思います。もう、あって当たり前という感じですね」



● 今回はヘッドウェアとのコラボレーションが中心ということで、改めて上木さんから見た、New Era®のイメージを教えていただけますか?

U「ヘッドウェアブランドとして世界的に有名ですし、HIP HOPやレゲエのジャンルでもひとりひとつは持っていて当然というブランド、というイメージでした。でも『The New Era® Book』というムック本に携わるようになり、いろいろな方のインタビューを通して実感したのは、僕の想像以上にブランドの高いクオリティが浸透しているということですね」

● 具体的にはどういうことですか?

「3月16日に出る最新号では、10代のインフルエンサーたちも取材しているんですが、例えば、お父さんがB-BOYで生まれた時からニューエラの帽子が家にあったりとか、子供の頃のダンスの先生が被っていたニューエラをお母さんにおねだりした経験があるアイドルとか、初めて買った[59FIFTY®]のステッカーを剥がして被ってたら、それを友達にイジられてHIP HOPに興味を持ち始めたパフォーマーの子とか...。JUNIORさんたちが作品やライブで伝えようとしているカルチャー的な要素が、ニューエラの帽子を通じて次の世代にもちゃんと伝わっているんだなっていうことは凄く感じています」



J「そう言えば、この間大分県に行ってたんですけど、居酒屋で「何でステッカー貼ってるの?」ってめっちゃ言われたんですよ。これって何で貼ってるんですか?」

U「HIP HOPカルチャーから来ているという説が有力なんですが、当時のニューヨークに住んでいた裕福はでない家庭の子供たちが、オレは新品のニューエラを被っているぜ! って見せびらかしたり、オレはお店から万引きしたキャップをそのまま被っているぜ! って悪ぶったりしていた、一種の遊びがファッション化したと言われています。新品のニューエラに対する彼らの憧れから来ているようですね」

J「その時は「何で貼ってんねん?」って言われて、カッコ良いでしょ! しか言えなかったので、今度はちゃんと説明しときますね(笑)」





H「ニューエラってね、凄く人気があるわけでしょ? もちろん作りは良いですよ。刺繍なんかも凄いし、技術力は誰が見てもわかるけど、形は言ってみれば標準的というか普遍的なものじゃないですか。にもかかわらず何でこんなに人気があるんですか?」

U「例えば一番有名な[59FIFTY®]というベースボールキャップは、実際にメジャーリーガーたちが被っているのと同じものなんですが、60年以上ほぼマイナーチェンジしかしてないんです。スポーツウェアの分野って日進月歩で高機能素材のアイテムが開発されているのに、その中で素材やデザインがほぼ変わってないというのは、この帽子の完成度がいかに高いかを証明しているんじゃないかと思います」 

H「それはクラシックカーに乗るような気分なんですかね? タテ目のベンツが今も新品で買える、みたいな」

U「帽子の普遍性は誰もが認めるところですが、最近で言うとYohji Yamamotoという世界的なモードブランドがその普遍性に着目してコラボレイトをしたり、今回の岡本太郎と同様に常に新しい息吹が注がれているように思います」

H「そういう普遍的なプラットフォームの上に、今の感性を注入して次の世代に向けた新しいものを生み出しているってこと? それはJUNIORの音楽と同じかもしれないですね。彼とは今日初めて会ったんだけど、伝統的なレゲエを懐メロ的にやってるわけじゃなくて、今の息吹を凄く感じるんですよ。レゲエの精神とかレゲエの核にあるものを大切にしながら、そこに現代の感覚を注入しているんだなって思うんだけど、どうですか?」



J「新しいことには、いろいろチャレンジしているんですが、守らなあかんところがあるのも確かですね。それは言葉ではちょっと説明しにくい部分なんですが...。向こうの一流アーティストと仕事するようになって、みんなが言うのは何でもアリってことなんですよ。レゲエって曲だけを聞いていたら、みんなで仲良くしようとか、そういうイメージがあると思うんですが、ジャマイカに行って言葉を知ったら凄く攻撃的な歌詞もいっぱいあって。あ、こんなん言うてもいいんやとか、そういうところが面白いなと。でもレゲエで守らなあかんところはみんな守ってるんですよね」

H「それって何なんですか?」



J「そのひとつは仲間やったり、家族やコミュニティーを大事に思う気持ちだと思います。あとは自分が何をするべきかっていうのが、みんなそれぞれの中にあって。それも口ではなかなか説明しづらいんですけど、ライブには全部出てると思うんで。オレがやらなあかんこととか、言わなあかんことは全部言うようにしているので、ぜひライブを観に来てください」

H「僕はね、YouTubeで彼を観てぶっ飛んだんですよ。何千人、何万人っていうオーディエンスが熱狂しているわけ。で、ステージを見ると彼しかいないんですよ。今まであの規模のライブは山ほど見たけど、それはザ・ローリング・ストーンズでも、マイケル・ジャクソンでも、みんな大規模な舞台セットがあって、大掛かりな空間演出があったんです。ところが彼の映像を見たら、ひとりなんですよ。でね、それを見ていて、あの熱狂は目に見えないものが空間をコントロールしているんだなって思ったんです。凄くプリミティブな、原始的な祭りのような。もっと言うとね、呪術だなと思ったんですよ。だから、あ、この人は呪術師なんだって。大げさに言うとね」

会場:笑

H「だから、よくそんなものをやれるなと思ったんですよ。何もなくて、ひとりしかいなくて。怖くないのかなって?」

J「何やろな、気がついたら今の規模になってたっていうだけの話なんです。いきなり2万人の前に立ってたら、たぶん何も言えないと思いますけど、最初は2〜3人の前でレコードを回すくらいのノリで始めて、それが10人、20人と増えていったんで、2万人の前でやるのもひとりの前でやるのも全く一緒の感覚でできるというか...」



● 先程、平野さんがおっしゃっていたプリミティブさというのは、岡本太郎のスピリットにも通じるところもあるのでしょうか?

H「岡本太郎って何をした人? って聞かれると「縄文の精神を日本人に伝えようとした人です」って答えているんです。太郎は18歳でパリに行って、29歳で帰国するんだけど、真っ先にやったことが、京都と奈良に行くことだった。日本のことを何も知らないから、まずは神社仏閣を巡ろうって。ところが京都は何百年か前の形があるだけで、奈良に至ってはまるで中国じゃないかと(笑)。どこが日本なんだと。だけど、ある日ついに出会うんですね、それが縄文だった。上野の博物館で縄文土器を見て、これが日本だと気づくわけです。狩猟民族の時代だから、いつ飢えるかもしれない、獣に食われるかもしれない。でも自然と溶け合って大らかに生きていた。その縄文人の精神の根幹にあったものが呪術なんです。つまり目に見えないもの、それは神であったり、自然であったりするわけだけど、そういうものと交信をして...。だから日本人の血には、そういう縄文の心が刻まれてるはずだと、だからそれを思い出せっていうのが岡本太郎の生涯をかけたメッセージだと僕は思っていて。だから太陽の塔もそうなんですよ。結局のところ日本人に対してそれを言っているんです」



● ルーツミュージックであるレゲエに根ざして来たJUNIORさんにも共振するところがありそうですね? JUNIORさんがアーティストとして岡本太郎に影響されたと感じる部分はありますか?

J「「型にハマるな」って岡本太郎が言っていたのを何かで見たんですけど、それは自分も常に思っていますね。音楽を作っている時も、やっぱり型にハメようとしてまうんですが、ホンマは型にハメへん方が良かったりするのを知っているんで。その「型にハマるな」っていう言葉はめちゃくちゃ響きますね」

● JUNIORさんが今後岡本太郎に期待する新しい企画やコラボレーションはありますか?

J「「えー、RED SPIDER×岡本太郎が出来たら楽しいなと思います」

会場:笑

H「ジュニアと組むなら、太郎の情熱とか価値観を若い人たちに伝える時に、そのキャリアを借りて大きなことをやりたいよね。要はどうすればお互いが面白いか、それが思いつけばね」



● これがきっかけで新たなムーブメントが生まれることを期待しております。ちなみに上木さんは今後New Era®にどのようなコラボレーションを期待しますか?

U「やはり圧倒的なブランド力があるので、この勢いのまま突っ走って欲しいですね。2020年には創業100周年を迎えるということで、そこでどんな凄い企画が飛び出すか楽しみです」

● 話は尽きませんが、改めて平野さんに伺います。今回のこのコラボレーションを、もし岡本太郎が実際に見たら、どういう感想を抱くと思いますか?

H「「ふうん」って言うと思いますよ(笑)」

会場:笑

● 帽子は被ってくれますかね?

H「それはもちろん被ると思いますよ」



● では、どんな方にこのキャップやハットを被ってほしいですか?

H「誰でもいいんです。そういうと語弊があるかもれないけど、現状の太郎のファンとは違うところに広がっていくだろうと思っているんですよ。太郎のことなんて何も知らないニューエラのファンが、カッコ良いって被ったけど、ところでこれ何? って。それで知ってくれれば良いわけです。そう考えるとJUNIORの世界も太郎のコアなファン層とたぶん違うわけですよ。違うところに広がっていくメディアになってくれるわけでしょ? そこが僕らにとっては一番期待するところだし、組む意味があるわけですよね。だから太郎を好きになってくれって呼びかけてもらおうなんて思ってないです。勝手に発見してくれればいい。ただね、ひとつだけあるのは、岡本太郎を知らないより知っていた方が楽しいよ! って。それは事実だと思うから、その事実を知らない人たちに伝えてもらえるのは凄く大きいことなんですよ」